満月の屋上で食卓を囲む天野透、橘ひより、神代蓮、白石湊、黒川結衣、小鳥遊つむぎ。文字なしの独立キービジュアル。

食べるたび、
世界が変わる。でも——
ただ、みんなと
ごはんが食べたい。

ひとくち天災 ~食べすぎる僕と、弱くする君~

FIRST BITE

WEB小説プロローグを読む CHARACTER6人の食卓へ EXPERIENCEひとくち実験

普通の「いただきます」を、もう一度。

SCROLL

強くするな。うまくしてくれ。

プロローグを読む

INTRODUCTION 01 / 物語

これは、
最強になりたい少年の
物語じゃない。
—— 普通に食べられる幸せを、
取り戻す物語だ。

食べ物の作用が、何万倍にもなる少年・天野透。
彼を「弱くする料理」をつくるため、橘ひよりは今日も台所に立つ。
食べることで変わっていく世界と、変わらない想いの物語。

ふたりのはじまりを読む

CHARACTER 登場人物

食が、運命を変えていく。

6人、それぞれの「いただきます」。

人物を選ぶと、詳しい紹介がひらきます。

EXPERIENCE

ひとくち実験

食べると、どうなる?
一口で起きる変化を、のぞいてみよう。

食材を選んで体験する

WEB NOVEL

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ここから、すべてが始まる。
プロローグ「月より遠い、醤油差し。」

無料で読む 約5分
小説を読む ひとくち実験
ひとくち実験

ひとくち天災 WEB NOVEL

WEB NOVEL / PROLOGUE 01

WEB先行プロローグ

月より遠い、
醤油差し。

ひとくち天災 約5分

月の石まで見える。

そう言った天野透に、橘ひよりが最初に返した言葉は「すごい」ではなかった。

「じゃあ、そこの醤油取って」

九月の放課後。調理室には、焼きたての卵焼きの匂いが残っていた。窓の外にはまだ青い空があって、その端に、薄い月が浮かんでいる。

透には、その月に転がっている石が見えていた。

欠けた縁。細い影。石の下に入り込んだ、さらに小さな砂。
そこまで見えるのに、机の上は、輪郭のない色のかたまりだった。

「……どこ?」
「目の前」
「目の前が、いちばん見えない」

ひよりが黙った。
信じてもらえなかったのだろう、と透は思った。いつものことだった。

けれど、次に触れたのは、冷たい醤油差しの側面だった。彼女が、透の右手まで運んできたのだ。

「持てる?」
「うん」
「じゃ、それ。二センチ右」

透は言われたとおりに動かした。

「ありがとう」

そんな簡単なことで礼を言われたのが、少し久しぶりだった。

白い皿の上には、ブルーベリーがもう一粒残っていた。

ひよりが作った試作デザートの材料だ。透は、料理研究部に入ったばかりの彼女に、試食を頼まれた。断り方を探すより先に、皿の上の小さな青を見てしまった。

たった一粒なら。

何度も後悔して、そのたびに、また使ってしまう言葉だった。

「なんで先に言わないの」

ひよりの声は、怒っていた。

「言うと、食べさせてもらえなくなるから」

口にしてから、子どもみたいな言い訳だと思った。
それでも、ほかに説明のしようがなかった。

天野透の体は、食べ物に大げさすぎる返事をする。

目に関わる作用なら、目だけが。熱に関わる作用なら、熱だけが。
人の何万倍も先へ行くくせに、残りの体は置いていく。

コーヒーを飲んだ日は、友達が「おはよう」と言い終わるまでが、ひどく長かった。
頭の中ではいくらでも返事ができた。口は、一度しか動かなかった。

便利だね、と言われる。
役に立つね、と言われる。

そのあとに誘われるのは、だいたい、食事ではなかった。

「いつも、何食べてるの」

透は鞄の中を探った。指で縫い目を確かめて、決まったポケットから、銀色の小さな袋を取り出した。
何度も検査と調整を繰り返して、ようやく食べられるようになったものだ。

ひよりが袋を受け取った。
カサ、と薄い音がした。

「味は?」
「安全」
「それ、味じゃない」

知っている。
透は、笑うつもりで息を吐いた。

ひよりは、しばらく何も言わなかった。
包丁を片づける音。水道の音。皿が重なる音。

デザートは、下げられたのだと思った。

ああ、終わった。
これで彼女も、透の前には料理を出さなくなる。

「手、出して」

言われて差し出すと、指の間に、一本のスプーンが収まった。

「何?」
「まだ何も。持つだけ」

その声が、さっきより近かった。
ひよりは隣の椅子に座っていた。

「今日ここで、適当に混ぜて食べさせたりしないから」

透の肩から、少し力が抜けた。

「まず、聞く。食べられたもの。食べられなかったもの。どれくらいで戻ったか。嫌だったこと。全部」
「……面倒だよ」
「料理って、わりと面倒なものだよ」

紙をめくる音がした。

「卵焼き一個だってさ、甘いのが好きな人と、しょっぱいのが好きな人がいる。冷めてから食べるなら、また変える。そういうのを考えるのが、作るってことでしょ」

透は、スプーンの柄を親指でなぞった。

彼女が言っているのは、透の体を治すという話ではなかった。
透に合わせて、料理を変えるという話だった。

「俺だけ、手間が何万倍もかかる」
「そこまで律儀に体質そろえなくていいから」

思わず、笑った。

ひよりも笑った。たぶん。
月の砂ばかり見えて、その顔はまだわからなかった。

「じゃあ、最初の質問」

ペンの先が、紙を軽く叩いた。

「何が食べたい?」

透は答えられなかった。

何を食べるとどうなるかなら、答えられる。
何を食べてはいけないかなら、もっと詳しく答えられる。

でも、その質問には、しばらく答えていなかった。

「……同じのがいい」
「何と?」
「みんなと」

声にした瞬間、ずいぶん小さな願いに聞こえた。

同じ皿。同じ量。同じメニュー。
昼休みが終わる前に食べ終えて、うまかったとか、ちょっと熱かったとか言いながら、教室に戻る。

月なんか、見えなくていい。

「あ、でも」

慌てて付け足した。

「おいしいほうがいい」

ひよりは、今度ははっきりと笑った。

「そこは任せてよ」

窓の外が、少しずつ夕方になっていた。

月面の石が、遠ざかりはじめた。輪郭がほどけて、代わりに、窓枠の線が戻ってくる。
透の視界は、ようやく、この調理室に帰ってきた。

ひよりのノートが見えた。

いちばん上に、大きな文字があった。

『天野透が、普通におかわりできる料理』

その下は、まだ真っ白だった。
レシピも、答えも、一行も書かれていなかった。

なのに透は、今日初めて、ちゃんと腹が減った気がした。

「決めた」

ひよりが、ペンを置いた。

「私、あんたを弱くする料理人になる」

ヒーローになれ、と言った人はいた。
もっと強くなれる、と言った人もいた。

弱くなっていいと、言われたのは初めてだった。

「……注文、つけてもいい?」
「どうぞ」

透はスプーンを置いた。
目の前にいる人の顔を、今度は、ちゃんと見た。

「強くするな。うまくしてくれ」

ひよりは、空の皿を引き寄せた。

「はい。承りました」

THE NEXT BITE IS YET TO COME.

ふたりの献立は、
まだ白紙。

本編へつながる、最初のひとくち。
先行版の内容は、制作の進行にあわせて更新する場合があります。

企画・制作 株式会社GATO JAPAN

本作品はフィクションです。登場する人物・団体・AIは実在のものとは関係ありません。

WORLD / THE RULES OF A BITE

世界を救える少年と、彼を弱くする料理人。

最強よりも、
一緒に食べる一人前。

01 / THE BODY

食べる。ひとつの作用だけが、何万倍にもなる。

透の体は、食べ物に大げさすぎる返事をする。目に関わる作用なら目だけが、熱に関わる作用なら熱だけが、人の何万倍も先へ行く。身体全体が都合よく強くなるわけではない。

02 / THE COST

できることが増えるほど、普通が遠ざかる。

月の砂粒まで見えても、目の前の醤油差しにはピントが合わない。思考が速くなっても、身体の動きはそのまま。誰かにとって便利な能力は、透にとっては食事を難しくする体質でもある。

03 / THE RECIPE

料理の上達で、主人公が弱くなる。

ひよりが目指すのは、栄養とおいしさを残したまま、異能の作用だけを抑える料理。強くなるためではなく、安心して誰かと同じ食卓を囲むために、ふたりは一皿ずつ試していく。

「強くするな。うまくしてくれ。」

食品の作用と調理法は、現実の効能や食べ方の推奨ではなく、この作品の中の超常的なルールです。

企画・制作 株式会社GATO JAPAN

本作品はフィクションです。登場する人物・団体・AIは実在のものとは関係ありません。

このサイトについて

作品について

『ひとくち天災』は、小説・WEB・SNSでの展開から育てていくオリジナル作品です。アニメ化・キャスト・放送日・発売日が決定したことを示すものではありません。

掲載素材

6人の人物画像は、それぞれ単独で生成した専用イラストを使用しています。キービジュアルからの切り出しではありません。文字なしキービジュアルと、実際のアルファ透過を持つタイトルロゴも別素材として実装し、画面上で重ねています。人物名・紹介文・キャッチコピー・操作ボタンはHTMLの文字です。

プロローグ

これまでのWEB先行版「月より遠い、醤油差し。」を引き継いで掲載しています。制作の進行に伴い内容が更新される場合があります。

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